あの時の人間関係の後悔が募る…RoboCup@Home 世界大会2位の光と影

EINDHOVENでの大会の集合写真

写真掲載了承済み

要約

優柔不断なリーダー(筆者)によってプロジェクトが混乱し、人間関係も崩れかけてしまった。しかし、チームが完全に解散することなく体制を整え続け、最終的にはRoboCup@Home 世界大会で成果を得たストーリー。

読者層

  • リーダーをしているが、うまくマネジメントや信頼を得られている実感がない人
  • これからリーダーをやる人
  • メンバーとリーダーの違いを明確に理解したい人

学べること

  • Takuchan(筆者)の性格や考え方
  • リーダーの素質とはどのようなものか
  • リーダーが抱える葛藤や、組織マネジメントのヒント

この記事はナイーブです

このエピソードは私の価値観に大きな影響を与えた実話です。内容としては非常に繊細であり、当事者が読めば驚かれる部分もあるかもしれません。当時の私の気持ちをどうかご理解いただければ幸いです。

この記事は、世界中のリーダーが同じような境遇に立たされたとき、一つの事例として参考にしていただければと思います。あくまで私個人の考えとして読んでいただけると嬉しいです。

私の理想的なリーダー像

私は2024年、金沢工業大学 夢考房RoboCup@Homeのプロジェクトリーダーに任命されました。それ以前のプロジェクトでは、人によって活動への取り組み方に大きな差がありました。仕事ができる人ほどどんどん仕事を引き受け、新しく入ったメンバーややることを見つけられない上級生はプロジェクトから離脱してしまうことが多かったのです。私自身も離脱寸前でしたが、「この4年間で誰にも負けない社会での武器を作りたい」という思いを強く持ち、自分なりに取り組める仕事を探しながら少しずつ貢献していました。

そんな私に転機が訪れたのは、RCJ2023の大会でポスターセッション優勝を果たしたときです。日頃からポスターを作成し、練習を重ねた成果が形となりました。

この経験を経て、「リーダーになって、メンバーが一人ひとり貢献できる環境を作りたい」という思いが強くなりました。私が味わった達成感や楽しさを、より多くの人に感じてもらいたかったのです。

そこでリーダーになるにあたり、私は以下の“公約”を自分の中で掲げました。

  • ① 自分がお手本となる存在になること
  • ② 明確な目標を立てつつ、メンバーの考えを反映できる体制をつくること
  • ③ 上級生の自覚を持って学習してもらうこと(後に新入生と上級生のバディ制度を導入)
  • ④ 各開発班に有意義な開発目標を立てられるようサポートすること
  • ⑤ メンバー全員が唯一無二の実力を発揮できる環境にすること

要となる考えは「全員が主役」です。リーダーは命令する立場ではなく、下から支える存在。私にとって「リーダー特権」のような発想は一切ありませんでした。

優秀そうな写真

他人に期待しすぎていた私

大会の開発期間中、私は“公約①”を守るため、自分を追い込みました。テストが近くても面接が控えていても、誰もいない時間帯でも夢考房に通い、「お手本になる」ことを最優先にしていたのです。もともと開発が好きでしたが、このときばかりは“やりたいからやる”というより、“公約を果たすための義務”に変わっていました。成績はみるみる下がり、学期GPAは前回より1ほど落ちましたが、「仕方ない」と自分に言い聞かせていました。

同時に、メンバーに対しても厳しくなっていました。自分が全力でやっているぶん、同じ熱量で取り組んでほしかったのです。しかしメンバー全員が私と同じように自分を追い込めるわけではありません。私は彼らに期待しすぎていました。

その結果、ある友人(サブリーダー)がミーティングに遅刻したり欠席したりなどの怠惰な態度をとるようになり、私のストレスは極限に達しました。ほかの人にも相談した末、「彼のよくないところ、不満点」をA4一枚にまとめ、本人に見せながら話し合うという最悪の手段をとってしまいました。

実際、書き出した内容の半分以上は愚痴に近いものでした。それを本人に読み聞かせたところ、彼は「わかったわ」と言い残して部屋を出て行き、それきり戻ってきませんでした。あのときの彼の表情は今も忘れられません。一週間経っても戻らない彼のことを考えると、私がとったやり方は取り返しのつかないものだったと後悔しました。さらに、“公約⑤”を自分で壊してしまったとも感じました。電話をかけても出てもらえず、本当に申し訳ない思いでいっぱいです。もちろん、ほかのメンバーからも批判を受けました。リーダーとして当然の結果です。

自分には精神的な余裕が、もう、失われていました。

優柔不断な私の態度から生まれた、メンバーの不満

やがて信頼関係が崩れ始めた頃、RoboCup@Homeの世界大会公募が始まりました。運営側のごちゃごちゃのせいで公式大会としてフィールドに入れないかもしれないという状況の中、私自身は「公式大会で成果を残し、ほかのチームと交流する意義がある」と考えていました。しかし「非公式扱いになる」という正式発表を聞いた瞬間、「出場しても意味がない」と考え、チームの技師と相談して「出場しない」という判断をTeamsでアナウンスしたのです。

ところが、その翌日、担当教授や主要メンバーと臨時会議を開いた結果、意見が二転三転して「やはり出場する」ことになってしまいました。2年生以上のメンバーで多数決を行った結果、8割の人が「出場しないほうがよい」と言ったにもかかわらず、私は過去の功績や、やる気のあるメンバーがいることを理由に反対を押し切ったのです。「優柔不断すぎる」と言われても仕方ありませんでした。

当然、反発するメンバーもいました。こんな時こそ冷静に対応し、リーダーが責任を取るべきだと自分に言い聞かせました。メンバーの大会に対する理解を深めるため、定例ミーティングなどでなぜ大会に出る必要があるのかを何度も説得しました。全員の努力のベクトルを合わせようと必死でした。

個人的には手ごたえが微妙だと感じていました。しかし、前進するしかないのです。

この時点でのチームの状況を整理すると、実は私がリーダーに就任してから組織を大きく変革していたのです。去年とは全く違う責任感や難易度に直面していました。この改革によって、大学の授業とプロジェクトの両立が難しくなった人たちからは疲労の声が上がっていました。

それでも嬉しかったこと

混乱した状態のままでも、一緒に世界大会に向けて頑張ろうとしてくれるメンバーがいました。優勝を目指し、積極的に手を動かしてくれたのです。私の信用が落ちているのは明らかだったのに、それでもついてきてくれる姿勢に、私は救われました。同時に、彼らを心から尊敬し、信頼していました。

とはいえ、組織を混乱させた責任から逃れられるわけではありません。必死で努力し、少しでも信頼を取り戻そうとしました。最終的には引退式で拍手をもらうことができましたが、それはまた別の話です。

最後に

この話を振り返ると、私は「信頼されているかどうか」に振り回されすぎていました。しかし最も大事なのは、「リーダーとして正しい判断を下すこと」であり、信頼を得ることばかり気にして判断を誤ると、組織やメンバーを傷つけることになります。

適切な判断を行えば、チームが「仕方ないよな」と思って進めることができる。

私が今回大きく悔やんでいるのは、メンバーとの対話を怠り、外部の人にばかり相談してしまったことです。「人に期待しすぎてリターンがなかった」ために、メンバーに直接向き合う気持ちをどこかで失っていました。過去に戻れるなら、「自分が頑張っているからといって、それを他人に押し付けないように」と、自分にアドバイスしたいと思います。

私のような苦い経験をしないためにも、リーダーとして組織を見据えながら、正しい方向へ導く判断を取っていただければ幸いです。